321系

 JR西の321系(福知山線で脱線した207系の後継)が営業運転を開始したそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/JR%E8%A5%BF%E6%97%A5%E6%9C%AC321%E7%B3%BB%E9%9B%BB%E8%BB%8A
「先頭車を動力車化して低重心にすることによって横転しにくくした」というふれこみなんですが、今回車両の仕様を見て「?」が3つぐらいつきました。というのも、今まで見たこと無いような不思議な仕様なので。

 6M1C(一編成中に動力車6両、付随車1両)の7両編成? こんな電動車比率の高い電車は加速度日本一を謳う阪神(ジェットカー)以外では見たことがありません。加速度を上げるためには動力車比率を上げるのが賢明ですが、駅間が長く線形の良いJRがそんなに加速度にこだわるのは何かおかしいです。明らかに裏がありそうです。さらに動力車を増やすと建造費・維持費が上がるので、できるだけ動力車を減らすのが最近の傾向です。低コスト化に熱心なJR西がそんな高価な車両を作るはずがない。ということで、よく見てみるとなんと「動力車はモーターを2機搭載する」(通常1車両には4軸あるので4モーターが標準)と…

 なるほど確かに今まで動力車・付随車と、車両毎にモーターのありなしを変えていたのを、できるだけ多くの車両にまんべんなくモーターを割り振った、ということですか。最近の車両はエネルギーを有効に利用するために動力車の回生ブレーキ(モーターで発電して架線に返還)を優先的にかけるようになってます。つまり動力車はめいっぱいブレーキがかかっていて付随車はノンブレーキという状態が日常的に発生します。これはエコロジーという意味では非常に良い状態ですが、編成中の車両の安定性という意味ではあまり好ましくない状況です。編成中でのこのブレーキのアンバランスによっておこった事故としては、日比谷線脱線事故がわりと有名でしょうか。そういう意味ではモーターをできるだけ多くの車両に分散して配置したという今回の設計は評価出来そうです。

 ところで、各車両の4軸中からモーターのついた軸を2軸選ぶわけですが、どう配置してるんでしょう。1車両に2動力軸というのは大手の鉄道ではかなり少数派ですが、1両で運行することの多い路面電車とかローカルな鉄道ではわりと見かけます。ということで、それを例に取ると、前後の台車にモーターを1機ずつ配置するというのが一般的みたいです。(車両には前後にそれぞれ台車がついていて、それぞれの台車について2軸車輪がついている)。ようするに幾何学的に言うと車両の中心で線対称です。なかなか安定しているように見えますね。では321系ではどうかというと… どうも動力軸2軸の台車とモーターのついていない車軸が2つの台車という組み合わせみたいです。なんかバランス悪いですね。せっかく編成全体のバランスを取ったのに、1両1両がアンバランスになってます。いまいち何がやりたいのか分かりません。

 あんまり知られてないのかもしれませんが、鉄道は左右に蛇行しながら走る乗り物です。詳しく説明してるときりがないんですが、列車が自然に・安全にカーブを曲がれるように車輪をデザインした結果、そういう仕様になってます。直線なレールの上でも周期的に左右に蛇行しながら走ります。日常的には決められた速度以内で走るならそういう揺れは想定の範囲内です。もしかしたら高速で走っているときに異様に左右に揺れる電車に乗った経験がある人もいるかもしれませんが、大概は車両特性orちょっとした整備不良(想定の範囲内)で、特に今すぐ脱線するとかいうものではないです。ところが、これが新幹線のような速度になってくると無視出来ません。だいたい狭軌では200km/hぐらい、標準軌では350km/hぐらいがいわゆる一般的なバネ・ダンパー系で静震できる限界で、それ以上のスピードではフィードバック制御(つまり揺れを打ち消すような方向に台車をアクチュエータなどで動かす)をかけてやらないと安全性が確保できない、ということで、噂の次世代猫耳新幹線なんかではそういう装置が取り付けられていたはずです。

 話はずれましたが、鉄道にとってバランスよく揺れるというのは大切な部分です。ところが、今回の321系みたいな前後の台車デザインが違うと、車両の前後で揺れの周期がずれて不自然に揺れるのではないだろうかと考えられるわけですが。その辺りだれか意見ある人いないんでしょうか。そういえばJR西日本のローカル線用125系なんていうやつも片側の台車だけにモーターを積んでた気もしますが。こっちは営業速度90km/h前後の比較的低速で走ってるんで120km/hで走る321系と比べるのはどうかとも思いますが。