LangrichとArbitrage

最近始めたフィリピン英会話のLangrich。
Skypeでフィリピン在住のおにゃのこ先生とマンツーマンで会話します。
英語学習としての詳細は@HAL_Jさんのblog「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ | The Wisdom of Crowds - JP」にお任せするので、今回はこのビジネスに興味を持った経緯を語ってみたいと思います。


私自身は金融関係者ではないのですが、金融の世界にはArbitrageという単語があります。
裁定取引と訳されるでしょうか。
「異なる2つの市場の価格差を利用して利益を得ようとする取引」のことです。
金融の世界でこのArbitrageを語ると非常にテクニカルな話になってしまうのですが、金融に限らずビジネスの世界で非常に重要な概念なので取り上げることにしました。


例えば、ある2つの町があったとしましょう。
片側の町Aは、人口は少ないですが、近くには膨大な石炭が埋まっています。
そして、もう一つの町Bには、ほとんど石炭はないけれど、たくさんの人が住んでいます。
このとき、2つの町が離れていれば、Aは石炭が有り余り、Bは石炭を利用する人が溢れかえる状況になります。
それぞれの町での石炭価格はどうなるでしょうか。
Aの町では供給過多なんで、石炭はただ同然で投げ売りされるでしょう。
Bの町では供給不足なので、石炭は法外な高値で取引されるでしょう。


このとき、もし、ある技術的なブレークスルーがあって、この2つの町を繋ぐ大量輸送手段(運河、鉄道、道路など)が実用化されたとします。
一体何が起こるでしょうか。
このようなときに何が起こるかは、歴史が示してくれています。
Aの町とBの町の石炭価格がほぼ等しくなるまで、Aの町からBの町へ石炭が輸送されます。
そして、Bの町の人の中には、Aの町に炭鉱夫として働きに行く人も出てくるでしょう。
Aの町の炭鉱夫は大いに儲け、Bの町は安く石炭により発展します。
そして、この輸送会社は莫大な富を手にするのです。


ではそこに、快く思わない人はいるのでしょうか。
もし、Bの町で、限られた石炭を囲い込んでいた人達がいたならば、彼らは大変な目に遭うことになるでしょう。
Bの町で、有り余る労働力を安く買い叩いていた人たちも同様です。
彼らはこの新しい輸送手段を快く思うはずがないでしょう。
しかし、AとBの町をあわせた経済圏では、輸送しないより輸送した方が全体として豊かになるのです。


では、ここで少しLangrichを見てみましょう。
かたや、教養もあって英語を自在に扱える人がたくさんいるけれども、自国に産業が乏しく職を提供できない国があります。
一方で、ビジネスを拡大したり、より高度な研究をする上で英語が必要不可欠なのに、英語を教えてくれる人が少ない国があります。
ここで、あるSkypeというほとんどコストのかからない通信手段(及びWebによる予約システム)という技術的ブレークスルーが起こったとすれば、一体何が起こるでしょうか。
そう、それが今、私達の前で起こっていることなのです。


実は困ったことに、この手の裁定取引は熱力学の第二法則に従ってしまいます。
なので、「壁」さえ取り払ってしまえば、あとは特に大きな力をかけなくても自然と利用が進んでしまいます。
まるで、お湯と水が混ざってぬるま湯になるように。


もう少し言うと、このような変化は決してLangrichに限った話ではないのです。
日本人はとても優秀で、途上国の労働者は単純労働しかできない、なんていうのは全くナンセンスな話です。
日本に優秀な人がいるのと同様に、海外にもやはり優秀な人たちがいるのです。
彼ら彼女らをいかに味方に巻き込むことができるかが、今後の経済力を決めるのです。
そう、これもまたグローバル化していく経済の潮流の一つであり、抗うことはコスト多くして利少なしといった話なのです。