モバイル通信への周波数割当について(1)

スマートフォンやモバイルルータなど、ますます生活に溶け込んでくるモバイル通信機器ですが、それらはある特定の周波数を使って基地局と通信します。国内の周波数の割当は総務省により決められていますが、どうにも情報が断片的で分かりにくいので、ざっくりまとめてみます。


まず、モバイル通信機器はほぼ全てUHF帯の周波数を利用していますが、およそ100MHz単位でざっくりとバンドが分類されています。

  1. 700MHz帯
  2. 800MHz帯
  3. 900MHz帯
  4. 1.5GHz帯
  5. 1.7/1.8GHz帯
  6. 1.9/2.1GHz帯
  7. 2.5/2.6GHz帯

これらの中で、700〜900MHz帯は俗にプラチナバンドと呼ばれます。室内や建物の陰にも良く届く特性の電波で、一つの基地局で広い範囲をカバーできます。一方で、1.5GHz帯以上の電波は直進性が強いため、物陰を作らないためにこまめに基地局を建てる必要があります。ただ、これは一概にどちらが良いというものではなく、とにかくどこでも繋がることが重要であればプラチナバンドを使うべきだし、逆にトラフィックを分散させるために基地局をたくさん建てたい場合は1.5GHz帯以上を使う方が干渉も少なく好都合だったりします。

プラチナバンド

まずは、何かと話題の多いプラチナバンドから見てみましょう。実はこの周波数帯域、整理のまっただ中です。無線は歴史的に低い周波数から実用化されてきました。800MHz近辺の帯域というのは、自動車無線や航空無線なんかでバリバリ使われてきた経緯があるため、携帯電話会社もその間を縫うように周波数を確保してきました。そのため、数MHz単位に細切れにされた帯域が、様々な用途で利用されています。ただ、そんなことでは増え続けるモバイル通信機器のトラフィックを捌ききれないということで、まるっと整理されることになりました。それが、2012年の今年です。


まずは、現時点で決まっている整理後の割当表です。実は一概にプラチナバンドと言っても、700MHz帯と800・900MHz帯では事情がちょっと異なります。700MHz帯は元々アナログテレビのUHF放送に使われていた帯域なので、地上波デジタル化が完了すれば綺麗に空きます。一方、800・900MHz帯は、まだら模様の周波数利用を関係各所で利害調整しなければなりません。それぞれ見てみましょう。

700MHz帯

地上波デジタル化によってまるっと空く帯域です。アナログ放送の跡地をどう利用するか検討が始まった頃は、700/900MHzをペアバンドにして、上り/下り100MHzずつのモバイル通信用帯域を確保しようなんて案もありました。まとまった帯域を確保できる方が、ガードバンド(干渉を避けるための余白)を減らすことができるため電波の利用効率が上がります。ただ、諸外国の情勢を見てみると、U.S.のVerizonが700MHz帯単体でLTEを開始するなんて話が出たりと、700MHz帯は700MHz帯単体で利用するというのが世界の流れになってきました。日本独自規格になってしまうと高々1億人のために専用ハードウェアを設計することになるためにコスト高になります。なので、国際規格に合わせましょうということで、2015年目標で35MHzx2の帯域割当が行われる予定です。できるだけ多くのキャリアに割り当てたいという総務省の意向なので、10MHzx3社に割り当てられるんではないでしょうか。おそらく各社LTEでサービスインすると思うので、LTEの700MHz対応機種は海外でもそのまま使えるようになりそうです(SIM Freeであれば)。

800MHz帯

PDC(国内2G)世代から国内携帯電話各社に愛用されているバンドです。とはいうものの、狭い帯域では1MHz単位で各社に割り当てられていたりするため、整理統合されることになりました。すでに既存のキャリアで整理後の割当が決まっていて、2012年の7月にごそっと移行します。Docomoは元々movaで使っていた帯域なので特に影響は無いと思いますが、AUは現在メインで利用している帯域です。新800MHz帯に対応してない端末は7月時点で使えなくなるのでご注意をとのこと。ちなみにこの帯域は海外では主に2G世代(GSM)で利用されています。今後国内キャリアも海外キャリアもLTEに移行してって事になると海外と互換性が出てきますが、今のところ国内独自帯域です。

900MHz帯

つい先日SoftBankにプラチナバンド割当とニュースになりました。ただし、先ほども書いたとおり整理真っ最中のバンドのため、2012年時点では5MHzx2でのサービスインです。アジアを中心に整理してモバイル通信に割り当てようとされている帯域のため、この帯域の端末も国際共通化されると思われます。SoftBankは、まず2012年割当の5MHzをHSPA+で、残りの10MHzをLTEで使う予定のようです。基地局・端末も海外と共通化して安くできますし、国際ローミングも簡単にできて良さそうです。


まずはここまで。