モバイル通信への周波数割当について(2)

1.5GHz帯と1.7/1.8GHz帯

次に、1.5GHz帯と1.7/1.8GHz帯についてです。この2つの帯域はどちらも少しマイナーな帯域です。特に、1.5GHz帯に関しては完全に日本独自規格です。また、1.8GHz帯に関しても、海外ではGSM-1800と2G世代の端末がまだまだ現役で使われており、これまた日本独自の使い方をされている帯域です。ただし、すでにキャパシティーめいっぱいまで詰め込まれている800MHz, 1.9/2.1GHz帯の混雑緩和のため、及び、まだ2015年まで利用し始められない700MHz帯までの繋ぎとして、1.5GHz帯でLTEが提供される予定です。では、それぞれ見てみましょう。

1.5GHz帯

既に周波数割当は決められており、SoftBankが先行してサービスインしています。また、今後Docomo, AUも隣接した周波数帯に参入してくる予定です。既存の利用者と一部調整がついていないために、Docomoは当初5MHz幅でのサービスインになりますが、2014年までには15MHz幅に拡張される予定です。

しかしこのバンド、つい先日の2/22に大問題を引き起こしました。この日、実はBSデジタルの空きチャンネル21ch,23chの試験放送が行われたのですが、この電波が干渉してSoftBankの通信障害が各地で発生するという事態が発生しました。ではどうしてそのような周波数割当が行われたんだと言われそうなのですが、周波数割当自体が直接干渉した訳ではないのです。BS衛星からの電波は12GHz帯というもっと高周波が使われているため、直接は干渉しません。しかし、アンテナで受信した後そのままの周波数では宅内配線で伝送しにくいために、アンテナ内蔵のコンバータで1.5GHz帯にダウンコンバートされるのです。このダウンコンバートされた電波が各家庭・共同受信設備から漏洩して干渉を引き起こしました。実は数年前に試験放送したときにも同様の現象が発生し、テレビの受信装置の改修工事が各地で行われました。しかし、またしても同じ問題が発生したのです。

SoftBankだけが悪者のように言われたりしますが、たまたま1.5GHz帯でサービスを開始していたのがSoftBankなだけで、1.5GHz帯はこのBS放送電波との干渉という根源的な問題を抱えています。隣接するAU, Docomoでも同様の問題が今後発生する可能性があります。LTEのメインバンドと期待されているのに、前途多難です。しかも、対策が容易ではないのです。

衛星放送は設定されたBS全チャンネルが使われることを元に収支計算しています。そのため、21,23chは使わないよと簡単に言えないのです。一方で、携帯電話各社も既に基地局等の設備投資を始めています。結局、テレビ配線からの漏洩を防ぎましょうという事になっているのですが、何千万件もある宅内配線をチェックすることなどとても現実的ではありません。しかも、テレビ配線はご存じの通り素人工事がまかり通るのです。昔VHSで使っていた低規格のケーブルをそのまま使っても、短距離であればテレビは映ります。そこからゆんゆん1.5GHzの電波が漏れ出していたとしても誰が気づくでしょうか。これから延々とモグラたたきすることになりそうです。

1.7/1.8GHz帯

海外ではGSMのメインバンドとして使われている帯域ですが、国内ではモバイル通信に割当て始めた時期が遅かったため、十分な空き帯域を確保できていません。関係各所と調整して整理を進めているところです。また、東名阪バンドという特殊な制限があるのもこの帯域の特徴です。これは、人口密集地の東名阪地域でのみ利用することができる帯域で、その他の地域ではモバイル通信以外の用途で使用されます。

使用するキャリアはEMobileDocomoのみです。特に、Docomoはこの帯域に対応した端末を積極的に販売していないため、ほぼEMobile専用バンドと言っても良い状況です。EMobileは今後のLTE展開のために、基地局設備を流用できる、1.7GHz帯の割当拡張を申請しています。今の10MHz幅では5MHzずつHSDPAとLTEに割り当てる必要がある(既存サービスの転送速度を落とさなければならない)ため、スムーズなLTE移行が厳しい状況です。まだ確定ではないですが、おそらく全国バンドの10MHzが追加でEMobileに、東名阪バンドの5MHzがDocomoに追加割り当てされるのではないでしょうか。


と、2つめもここまで。